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2018年4月18日

スモールビジネスを上手に「バトンタッチ」

マネーコンシェルジュ税理士法人/相続承継M&Aセンター(株) 代表税理士 今村仁

M&Aというよりバトンタッチ

 スモールビジネスの事業承継をお手伝いしていて感じるのは、これはいわゆる「Mergers and Acquisitions(合併・買収)」の略である「M&A」などではなく、「事業を次の世代や横の世代へバトンタッチ」していくお仕事なのだなということです。地方の旅館や町工場に行って、M&Aなんていう言葉を使うとポカンとされますが、「この事業をどのようにバトンタッチしていくお考えですか」と尋ねると、「そう、それが今一番の悩みなのだよ」と一生懸命に、決して饒舌ではないですがこれまでの事業のいきさつや苦労話を語ってくださいます。

 「言葉が時代を創る」という考え方があります。新しい時代には新しい価値観が必要で、新しい言葉が新しい価値観を創ります。今後10年の間に70歳超で後継者未定は約127万社(日本企業全体の1/3)。2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があります。特に地方において、事業承継問題は深刻です。スモールビジネスのM&Aがこの国に根付くことが時代の要請でもあり、その観点からは今は大きな時代の変革期です。新しい時代のために必要な言葉は、「M&Aではなくバトンタッチ」なのかもしれません。

 スモールビジネスでM&A・バトンタッチを進める上での最大の注意点は、そのスケールに合った適切な言葉を選んで会話を進めることだと思います。少なくとも最初から、DD(デューデリジェンス)やEBITDA(イービットディーエー Earnings Before Interest,Taxes, Depreciation and Amortization)等といった用語を使わずに、単に「財務調査」や「本業でのキャッシュベースでの儲け」等といった平易な言葉で会話することが、買い手や売り手、アドバイザーにとって、(意外と思われるかもしれませんが)とても大事なことです。スモールビジネスのバトンタッチでは特に、まずはお互いの胸襟を開かなければ何も前に進まないのですから。

売り手にとっての注意点

 創業社長の場合であれば、会社の意思決定に関してほぼご本人のご判断一つで決定できることも多いでしょうが、2代目や3代目社長、共同経営者の場合は、まずは「会社や事業を売却する」ことに関しての意思統一を図ることが大事です。創業社長の場合でも、話すべきご家族には了承を得ておくべきでしょう。そのためには、本当に売却するのが最善の策なのか、他に策はないのか(娘含めた親族内承継の再考、全部売却ではなく一部売却、廃業など)を、事業承継やM&Aに精通したアドバイザーに相談されることをお勧めします。売却の意思決定の部分を事前にしっかりと充分に詰めておかないと、後で、会社を混乱させるだけの結果になった、家族に亀裂が生じた等となりかねませんので、ご注意下さい。

 一般的に、上記以外で、M&Aで会社や事業を売却する時の売り手にとっての注意点は、下記5つとなります。
1.情報を漏らさないようにする
2.買い手やアドバイザーにはすべてをオープンにする
3.売却を決断したら本業に集中
4.買い手目線で考える癖をつける(自分が抜けても会社が回る仕組みに)
5.タイミングを逃さない

 ご自身の会社を売却しようとしているという情報が事前に他に漏れると、従業員の動揺や退職、風評被害による売り上げ減などが考えられます。売却のことは、限定された信頼できる方のみ(例えばスモールビジネスであれば奥様のみ等)への開示とするようにしてください。また、買い手の情報も時にインサイダー情報となることもあることから他に漏らさないようにしてください。

 買い手候補があらわれて交渉していく中で、事前に開示していないことが後になって出てくると、買い手にとっては不信感につながります。良いことも悪いことも買い手やアドバイザーにすべて早いうちに開示するようにしてください。

 また、売却交渉においては売り手の情報開示がその多くを占めますので、アドバイザーが付かずにされる場合は結構な労力となります。しかし、売却交渉の時期において、売り上げや利益が少しでも上がり基調なのかどうかは、価格を含む交渉を有利に進めるうえでとても大切ですので、売却を決断したら本業に集中するようにしてください。そのためにも、適切なアドバイザーを選定することをお勧めします。

 更には、売却を決断されたら、是非一度立ち止まって、自分の会社や事業を買い手目線で眺めてみる努力をしてみてください。買い手にとって、自分の会社がどう見えているのか、どこに魅力を感じるのか、どのあたりに疑問点を見出すのかを事前に考えてみてください。そうすると、(スモールカンパニーではどの会社も社長の役割が大きいでしょうから)「自分が抜けても会社が回るように会社の仕組みを変えていくこと」が大事であると気づくでしょう。

 最後に、M&Aではタイミングが大切であることも付け加えておきます。お相手候補が何社かあらわれると色々と目移りしたり、欲を出し過ぎたりすることもあります。不動産ではよく最初に来たお客が良いお客であるといわれますが、M&Aではそこまでは思いませんが、やはり意識の高い方が最初にエントリーされているということもありますので、少しでも良いお相手だなと感じたら、積極的に前に進めることをお勧めします。M&Aの場合は、最終的にお相手が決まらないと今までの苦労は無駄になってしまい、そういう意味では、M&Aは経営の最重要事項ですから、細部にこだわり過ぎず、高所大局から判断することを忘れないでください。

買い手にとっての注意点

 会社や事業を買うということは、かなり敷居が低くなってきているように感じます。例えば、「新規事業や新店舗を始めるときに0から作り上げるのではなく、既にある会社や事業を買って始める」や「東京の会社の地方進出時にM&Aを活用」等です。これだけ浸透してきた買い手にとってのM&Aですが、改めて、本当にその会社等を買うべきなのかどうかを、再考してみてください。一見、お金さえ払えば時間を買えるような楽なイメージがつきまといますが、果たして本当にそうでしょうか。カルチャーの違う会社をつなぎ合わせるのは、特に従業員目線で概観すると、大変な拒否反応が生じることがあります。購入会社がうまくいかないだけに留まらず、本業にもマイナス面が生じすることも少なくありません。これでは一から自分たちで始めた方が、結果的に早く目的にたどり着くことができたのかもしれません。時間を買ったつもりがとんでもない方向にいくことがあるのも、買い手目線で見た場合のM&Aの世界です。

 一般的に、上記以外で、M&Aを進める上での買い手にとっての注意点は、下記5つとなります。
1.情報を漏らさない
2.買ってはいけない会社を見極める
3.カルチャーの違いには細心の注意を
4.タイミングを逃さない
5.アフターM&Aが大事

 売り手の情報がもれると、風評被害による売り上げ減や、従業員・キーマンの離反などが考えられ、時にはその会社の生き死ににも影響を及ぼすことがあります。情報を漏らさないように、その情報の開示先についても限定し、細心の配慮をしてください。

 昨今ネットを中心に「会社や事業が高く売れるようだ」という情報が氾濫し、その結果、買ってはいけない会社の売り案件も多数目にするようになりました。例えば、簿外負債がある、過去に未開示のトラブルがあるなどです。会社同士のシナジー効果以前に、まずは、買ってはいけない会社をきちんと見極めるようにしてください。その時には、アドバイザーの活用をお勧めします。

 先ほども触れましたが、その会社のトップの考え方や従業員をベースとしたその会社のカルチャーの違いは、買う側にとってはとても重要な事項です。違うからダメであるとかではなくて、そのことが買収後に大きく影響することを事前に知っておいて、それを埋めるための努力やプラスに働く部分などを勘案しておくのです。

 また、会社や事業の購入には、タイミングが重要です。即断即決が良いとは限りませんし、長く熟考していると他社にその案件をとられてしまいます。特に良い案件であればあるほど、この辺りは顕著です。

 最後になりますが、M&Aは売り手にとってはゴールですが、買い手にとってはスタートであることを改めて再認識してください。時に買収交渉が難航すると、会社や事業を買うことが目的化してしまうことがありますので、ご注意ください。その意味でも、「アフターM&Aの計画を練ること(PMI(Post Merger Integration))はとても大切で、例えば、DD(デューデリジェンス)のタイミングでそういったことをヒアリングしてみるというのも1つのやり方です。

 
 

マネーコンシェルジュ税理士法人/相続承継M&Aセンター(株)
代表税理士 今村仁

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